Formula E driver Daniel Abt at Red Bull Ring, Austria.
© Philip Platzer/Red Bull Content Pool
Formula Racing

フォーミュラE基礎知識

フォーミュラEの知識でモータースポーツマニアの友人をうならせたい? 地球に優しいシングルシーターシリーズの基礎知識を手に入れよう!
Written by Ruth Lumley
読み終わるまで:6分公開日:
   
モータースポーツ界の話題の中心にはF1が居座り続けているが、まだ歴史の浅いフォーミュラEへの注目度はどうだろうか? サステイナビリティと電気自動車の技術的革命を主眼に置いたこのシングルシーターシリーズは、モータースポーツの未来像を提示している。
このフォーミュラEについてどれほどの知識を持っているだろうか? 今回紹介する初心者ガイドを読めば、4月14日にローマで開催される2017-18シーズン第7戦に向けて有用な知識が身につくはずだ。

フォーミュラEってどんなレース?

まずは基礎から始めよう。フォーミュラE(正式名称ABB フォーミュラE選手権)は、電気で走るシングルシーターマシンを使用する世界唯一のレース形式だ。
フォーミュラE構想は2011年に発案され、史上初となるフォーミュラE選手権レースは2014年中国・北京で開催された。
現在、フォーミュラEには10チームが参戦し、各チームに2名のドライバーが所属している。7カ月のシーズンを通じて、世界各都市の特設市街地サーキットでレースが開催され、これまではパリローマニューヨークなどの都市がフォーミュラEレースの舞台となってきた。

魅力はレースのみにあらず

フォーミュラEではサステイナビリティをメインコンセプトに掲げており、各メーカーはレース対応の新テクノロジーの開発とテストに取り組みながら、地球温暖化問題にも立ち向かっている。
フォーミュラEにおけるサステイナビリティの定義は「可能な限り二酸化炭素排出量を減らし、人類と地球にとってポジティブなインパクトをもたらすこと」だ。
そしてこの理念は、100%再生可能な燃料の使用、レース全体を1セットのみで走るリサイクル可能なタイヤ、観戦者への公共交通機関利用の呼びかけ(フォーミュラEのレース会場に駐車場は用意されない)、自宅からの360°オンラインライブ観戦の提供などを通じて実行に移されている。

フォーミュラE創設の経緯

環境負荷の少ないモーターレーシング・グローバルブランドの創設を目的として、FIA(世界自動車連盟)会長のジャン・トッド、フォーミュラE創設者・CEOのアレハンドロ・アガグの両名が協力してフォーミュラEを発足させた。
4シーズン目を迎えたフォーミュラEは、トップクラスのドライバーたちを惹きつけながらますます成長を続けている。
そして、フォーミュラEのファンは観戦者以上の存在だ。なぜなら、お気に入りのドライバーに投票してレースの展開に影響を与えられるからだ。人気投票で最多票を得た上位3名のドライバーには "ファンブースト" が付与され、レース後半でエクストラパワーが使用できる。
Daniel Abt showing what Formula E cars can do at the Krone E Mobility Play Days at Red Bull Ring, Spielberg, Austria in 2017.

フォーミュラEマシンをドライブするダニエル・アプト

© Samo Vidic/Red Bull Content Pool

レースのルールは?

F1と同様、フォーミュラE選手権にも最優秀ドライバーとチームを決める2タイトルが存在する。説明するまでもないが、ドライバーズタイトルはシーズンを通しての各ドライバーのベストリザルトの合計ポイントによって決まる。また、チームタイトルは、シーズンを通しての所属ドライバー2名のポイント合算によって決まる。
決勝前日、ドライバーたちはマシンの状態を確認するためにシェイクダウンセッションを行う。またFIAによるサーキットチェックも行われる。
1時間の予選セッションでは、決勝のスターティンググリッドが決まる。フォーミュラEにもルールとレギュレーションが大量に用意されているが、基本的には以上がフォーミュラEレースの流れだ。

チームやドライバーはどんな顔ぶれ?

フォーミュラEには全10チームが存在し、各チーム2名のドライバーが在籍している。チームの中には、フォーミュラE第1回大会で優勝した経験を持つ優勝争いの常連Audi Sport ABT Schaefflerや、表彰台フィニッシュ回数歴代1位の記録を持つAndrettiが存在する。電気自動車の未来像を提示するため、Panasonic Jaguar Racingも昨シーズンからフォーミュラE参戦を開始した。
Audi Sport ABT Schaefflerに在籍するドライバーのひとりが、ブラジル出身の元F1ドライバー、ルーカス・ディグラッシだ。彼は2014年に開催された史上初のフォーミュラEレース、北京ePrixの勝者で、2016-17シーズンのチャンピオンでもある。
同じく元F1ドライバーのジャン=エリック・ベルニュTECHEETAに在籍し、2017-18の第6戦終了時点で選手権首位に立っている。かつてWRCで活躍したスウェーデン人ラリードライバー、スティグ・ブロンクビストを父に持つ英国出身の元F3ドライバー、トム・ブロンクビストはAndrettiでドライブしている。
そして、Panasonic Jaguar Racingに在籍するミッチ・エバンスは、かつてニュージーランドのフォーミュラ・フォードで最年少チャンピオンに輝いた(当時16 歳)他、数々のレース優勝を達成してきた若き実力者だ。
尚、これまでのフォーミュラEではディグラッシ(2016-17シーズン)の他、ネルソン・ピケJr.(2014-15シーズン)、セバスチャン・ブエミ(2015-16シーズン)がドライバーズチャンピオンに輝いている。
Daniel Abt and Jean Pierre Kraemer gear up for their Formula E show run at Red Bull Ring, Spielberg, Austria in 2017.

フォーミュラEデモランを担当したダニエル・アプト&ジャン=ピエール・クレーマー

© Samo Vidic/Red Bull Content Pool

その他に知っておくべきことは?

常に進化しているフォーミュラEは、よりサステイナブルなモータースポーツのあり方を模索しながら、電気自動車の限界を押し広げ続けている。
2017年5月、フォーミュラEはドライバーが乗車しない無人自動運転車「ロボカー」による「ロボレース」計画を明らかにした。この無人運転によるロボカーはパリePrixで1.9kmのコースを1周し、歴史に新たな1ページを刻んだ。現在、開発陣はロボカーのスピードアップに取り組んでいる。
その一方で、フォーミュラEはさらに著名な自動車メーカーの興味を惹きつけ続けている。今シーズンからBMWが公式マニュファクチャラーとしてフォーミュラE参戦を開始しており、さらに来年からはMercedes BenzPorscheも加わる予定だ。
2016 Formula E champion Sébastien Buemi, who also races in the FIA World Endurance Championship.

2015-16シーズンのチャンピオンに輝いたセバスチャン・ブエミ

© Dutch Photo Agency/Red Bull Content Pool

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